小人の頭を、とある漫画のワンシーンがよぎった。
黒いノートに名前を書くと、書かれた人間は・・・
というあれだ。
あの有名なポテチ回を思い出した小人は、ふと考えた。
「人間の寿命が可視化された世界」について。
ちなみに小人は「のりしお」派である。
死神の目。
あの作品では、寿命の半分を代価に死神と契約をすることで、
相手の残り寿命(と本名)がわかるという「死神の目」を得ることができた。
その設定を飛躍させ、
小人は「寿命が可視化された世界線」について妄想してみたのだ。
寿命が可視化された世界。
基本的な設定はこうである。
つまりはこの世に生まれ落ちた瞬間から、
残り時間が表示されるというのがデフォルトの世界なのだ。
仮にこういう世界になったとして、
いったいどんな良いことや悪いことがあるのだろうかと考えてみた。
メリット
①効率的に生きられる。
「人生にはいつか終わりがくる」ということは、
誰しもが理解していることだ。
しかしそのいつかが明確ではないため、
理解はしていても実感は湧きづらい。
だが自分の最期がいつかを知ることができたら、どうだろう。
終わりが明確にわかっていると、
「自分が今何をすればいいのか」が、
具体的にみえてくるのではないだろうか。
食べてみたいもの、見てみたいもの、行ってみたいところ、やってみたいこと。
「いつか叶えたい」と漠然と思っていることが、
「いつまでに叶えよう」と具体的になるのだ。
終わりから逆算して、人生設計を立てることができるというわけだ。
「いつこの世を去るかわからない」という、
漠然とした不安からも解放される。
②別れの準備ができる。
「別れの準備」というとネガティブな印象もあるが、
良い側面もあるように思う。
誰だって大切な人との別れは辛い。
病気でおおよその余命がわかっている場合もあるが、
事故や犯罪等による、予想だにしない急な別れもある。
その<突然の別れ>というのが、この世界では起こらないのだ。
大切な人の最期がわかっていれば、
「もっとああしていたら、こうしていれば」
という後悔も減るだろう。
また、自分の寿命が先に尽きることわかっていれば、
残される人たちのために、必要な準備をしておくこともできる。
③UMAを発見できる。
「全ての人間の残り寿命が表示される」という設定のため、
言い換えれば人間以外には表示されないということ。
つまり、未確認生命体が人間のフリをして紛れていても
人間でないことがすぐにわかるということだ。
研究材料にしたり、侵略を阻止したりできるからメリットなのではない。
そんなことはどうでもいい。
ただ小人は、『ミギー』を見つけたいだけなのである。
UMAを見つけたら片っぱしから声をかけ、
ぜひ自分の右手に寄生してくれないかお願いするのだ。
デメリット
①結婚相手に求める条件が増える。
結婚相手の条件として、「高学歴・高収入・高身長」の“三高男子”
などという言葉が一時期流行していたが、
そこに「長寿命」が加わるというわけだ。
保険金や遺産目的の結婚なら話は別だが、
一般的にパートナーには長生きをしてもらいたいものである。
頭上に表示された時間が長い人ほど、有利だということだ。
「低学歴・低収入・低身長・短寿命」の人間にとっては、絶望でしかない。
相手の寿命を知った上で結婚できるというのはメリットもありそうだが、
様々な問題に発展する可能性が高そうである。
②犯罪が増えそう。
犯罪に関しては減る可能性もあるが、
小人の想像した世界の中では、犯罪が増えている。
自分の寿命、そして他人の寿命が確定していることで、
犯罪の垣根を越えやすくなるケースが増える気がするのだ。
そして、犯罪者になる可能性/被害者になる可能性は、
寿命が短いほどリスクが上がるように思える。
実際はどうなのだろうか。
③自分で最期を選べない。
基本設定の
④表示された寿命は絶対であり、伸ばすことも短くすることもできない
があるので、自分で最期の日を選択することができない。
これは、病気や怪我をしないというわけではなく、
どんな状態でも寿命が0になるまでは命があるということ。
つまり、どんなに人生が辛くて自ら命を絶とうとしても、
絶対に終わらせることはできないということだ。
これは場合にもよるが、かなり酷なことだと思う。
寿命が長ければ長いほど豊かに生きられるのかというと、
それもまた違いそうだ。
結論
「寿命が可視化された世界」は、良い面も悪い面もあることがわかった。
簡単にまとめると、
こんな感じだろう。
個人的には、自分の寿命より他人の寿命を知るほうが残酷な気がする。
もしも生まれたばかりの赤子の寿命が、
親である自分の寿命よりも短いとわかってしまったら。
正直、これは残酷すぎる世界である。
自分の寿命を知りたい人間は一定数いる気がするが、
他人の寿命を知りたい人間は、はたしているのだろうか。
というくだらない妄想を、もう3時間以上もしている。
小人はいったい、何をしているのだろうか。
とりあえず、ポテチを買いに行こう。