小人はショートカットに憧れている。
と同時に、ショートカットには苦い思い出もある。
そう、あれは小人がまだ、小学生の時の話だーー
小人のトラウマ。
ショートカットに憧れ、ひとり美容院へと出向いた小人。
ドキドキしながら要望を伝え、胸をときめかせていた。
しかし、緊張のせいもあってか睡魔に襲われた小人は、
いつの間にか眠りについてしまっていた。
目が覚めた時には、すでに散髪は終了。
ワクワクしながら鏡を見ると、
なんとそこには。
ちび◯子ちゃんさながらの、
おかっぱ頭の小人が映っていた。
話しかけられたくない派。
美容院での過ごし方は、人それぞれだ。
担当さんと楽しくお喋りをしたい人もいれば、
雑誌やスマホを見て過ごす人もいるだろう。
小人は必要なやり取り以外は、話しかけてほしくない派だ。
当たり障りのない天気の話くらいだったら構わないのだが、
あれこれとプライベートなことを訊かれるのは苦手である。
行きつけの美容院の方が安心感はあるのだが、
必然的に担当の方と距離が近くなり、
話しかけられやすくなってしまうのが難点だ。
それ故に、距離が詰まってきたなと感じると、
新しい美容院を探したくなる。
小人は昔から、定期的に人間関係をリセットしたがる癖があるのだ。
美容院ではKindleを。
そんな「話しかけられたくない派」の小人は、
美容院では本を読むことにしている。
以前は紙の本を持参していたのだが、
髪の毛が挟まったり、水滴が飛んできたりと
大切な本が汚れてしまうのが悩みであった。
そこで最近は、「Kindle」を読むことにしている。
これなら多少水滴が飛んできても、拭けば問題ない。
そういえば、この間行った美容院では
紙の雑誌が消え、代わりにタブレットが置いてあった。
良いアイディアだと思ったが、他人が触ったものは抵抗があるので、
やはりこれからも小人は自分のを持参しようと思う。
雑誌のチョイスは謎である。
雑誌で思い出したのだが、美容院では雑誌をどう選んでいるのだろう。
小人は今までで一度も、自分の好みに合う雑誌を出してもらえたことがない。
「3冊中1冊は全然好みではなかった」
というレベルではなく、3冊全てよくわからんものが置かれていることが多いのだ。
そもそも雑誌は読まないので別にいいのだが、
自分の世代と合っていない雑誌を置かれると、
いったい小人は何歳に見られているのだろうかと不安になる。
同じ経験をしたことがある人は、いるだろうか。
ショートカットへの道は遠い。
今回の散髪も、無難に毛先を整えるだけにしてしまった。
ショートカットへの憧れは消えない。
いつかは小人も・・・
と思っているのだが、確実に似合わないことも自負している。
子供の頃に植え付けられたトラウマは、
大人になっても抱えて生きていかなければならないのだ。
あのおかっぱちび小人は、
永遠に小人の中からいなくなることはないのだろう。